特定旅客自動車運送事業の概要
(1)特定旅客自動車運送事業とは
旅客自動車運送事業のうち、特定の顧客の需要に応じ、一定範囲の人を決まった場所まで運送する事業をいいます。
例えば、企業や学校の通勤・通学用バス、施設の送迎バスなどがこれに該当します。
(2)一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス事業)との違いについて
特定旅客自動車運送事業と一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス事業)とは、以下の点で大きく異なります。
①顧客(運送需要者)が原則として単数の者に特定されること。
貸切バス事業の場合、不特定多数の者(団体)を顧客とすることができます。
②運送できる乗客(取扱客)が一定の範囲に限定されること。
貸切バス事業の場合も、取扱客は貸切契約をした顧客(団体客)に限られますが、貸切契約さえ交わせれば取扱客を広げることも可能です。
③運送する場所(路線又は営業区域)が設定されること。
貸切バス事業の場合も営業区域という制限がありますが、特定旅客の場合、運行経路を予め設定する必要があるため、営業区域が相当程度限定された運送形態になります。
(3)一般貸切旅客自動車運送事業から特定旅客自動車運送業への免許換えのメリット・デメリットについて
【メリット】
①車両1両から運行を開始できる。
②法令試験がない。
③一般貸切旅客自動車運送事業と比べて規制が厳しくない。
⇒例えば、顧客との貸切契約により運賃料金を自由に設定できるなど
【デメリット】
●特定旅客自動車運送事業の場合、顧客・取扱客・運行経路が限定されてしまうため、「送迎バス」のような運送形態でないと一般貸切旅客自動車運送事業から免許換えすることが難しい。
なお、「ロケバス」については、一定の条件を満たすことが出来れば、一般貸切旅客自動車運送事業から特定旅客自動車運送事業へ免許換えをすることも可能です。
現在、送迎バスやロケバスを運行されている貸切バス事業者の方で特定旅客自動車運送事業への免許換えをご検討されている方は、ご気軽にお問い合わせください。
※初回のご相談は無料です(ただし、出張相談を除きます)
特定旅客自動車運送事業経営許可申請の審査基準について
特定旅客自動車運送事業経営許可申請の審査基準については、大きく分けて「物(施設)」と「人」の要件に区分することができます。
(1)審査基準(「物(施設)」の要件)
①営業所
配置する事業用自動車に係る運行管理及び利用者への営業上の対応を行う事務所であって、次の各条件に適合すること。
(ア)申請者が土地・建物について1年以上の使用権原を有すること。
※施設の使用権原を証する添付書類の提出が必要です
(イ)建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触しないこと。
※業所候補地が関係法令に抵触していないか事前に調査する必要があります
(ウ)事業計画を的確に遂行するに足る規模であること。
※添付書類として施設の図面等の提出が必要です
②事業用自動車
申請者が事業用自動車の使用権原を有すること。
※車両の使用権原を証する添付書類の提出が必要です
③自動車車庫
自動車車庫が次の各条件に適合すること。
(ア)原則として営業所に併設されていること、ただし、併設できない場合は営業所から直線で2キロメートルの範囲内にあって運行管理をはじめとする管理が十分可能であること。
※添付書類として施設の図面等の提出が必要です
(イ)車両と自動車車庫の境界及び車両相互間の間隔が50センチメートル以上確保され、かつ、営業所に配置する事業用自動車を全て収容できること。
※添付書類として施設の図面等の提出が必要です
(ウ)他の用途に使用される部分と明確に区画されていること。
※添付書類として施設の図面等の提出が必要です
(エ)申請者が土地・建物について1年以上の使用権原を有すること。
※施設の使用権原を証する添付書類の提出が必要です
(オ)建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触しないこと。
※自動車車庫候補地が関係法令に抵触していないか事前に調査する必要があります
(カ)事業用自動車の点検、整備及び清掃のための施設を設けていること。
※添付書類として施設の図面等の提出が必要です
(キ)事業用自動車の出入りに支障のない構造であり、前面道路が車両制限令に抵触しないこと。
※添付書類として前面道路の道路幅員証明書等の提出が必要です
④休憩、仮眠又は睡眠のための施設
(ア)原則として営業所又は自動車車庫に併設されていること、ただし、併設できない場合は営業所及び自動車車庫のいずれからも直線で2キロメートルの範囲内にあること。
※添付書類として施設の図面等の提出が必要です
(イ)事業計画を的確に遂行するに足る規模を有し、適切な設備を有すること。
※添付書類として施設の図面等の提出が必要です
(ウ)申請者が土地・建物について1年以上の使用権原を有すること。
※施設の使用権原を証する添付書類の提出が必要です
⑤建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触しないこと。
※休憩仮眠睡眠施設候補地が関係法令に抵触していないか事前に調査する必要があります
⑥損害賠償能力
旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運行により生じた旅客その他の者の生命、身体又は財産の損害を賠償するために講じておくべき措置の基準を定める告示で、定める基準に適合する任意保険又は共済に計画車両の全てが加入する計画があること。
※見積書の写し・宣誓書等の添付書類の提出が必要です
(2)審査基準(人の要件)
①運送需要者
運送需要者が原則として単数の者に特定されていること。
※添付書類として運送需要者との契約書写し等の提出が必要です
②取扱客
取扱客が一定の範囲に限定されていること。
例えば、「○○株式会社の本社工場の従業員、臨時職員(パート)に限る」など
※添付書類として取扱旅客の種類等を記載した書面の提出が必要です
③路線又は営業区域
需要者の需要と整合性のある路線又は営業区域が設定されていること。
※添付書類として運送需要者との契約書写し等の提出が必要です
④管理運営体制
(ア)法人にあっては役員のうち1名以上が専従すること。
※貸切バス事業の場合とは異なり、法令試験を受験する必要はありません
(イ)営業所ごとに配置する事業用自動車の数に義務づけられる常勤の有資格の運行管理者の員数を確保する管理計画があること。
※添付書類として運行管理者資格者証等の提出が必要です
(ウ)原則として、常勤の有資格の整備管理者の選任計画があること。
※添付書類として整備管理者の資格要件を証する書類の提出が必要です。
(エ)事業計画を遂行するに足る員数の有資格の運転者を常時選任する計画があること。
※添付書類として運転者の免許証の写し等の提出が必要です
⑤法令遵守
申請者又は申請者が法人である場合にあってはその法人の業務を執行する常勤の役員が欠格事由等に該当しないこと。
※添付書類として申請者及び常勤役員全員分の宣誓書等の提出が必要です
特定旅客自動車運送事業経営許可申請に関する準備書類について
特定旅客自動車運送事業経営許可申請に関する準備書類(添付書類)は以下の通りです。
【準備書類(添付書類)】
(1)計画する事業用自動車の使用権原を証する書面
①車両の概要を示した書面(自動車検査証の写し等)
(ア)自己所有の場合・・・自動車検査証の写し
(イ)購入する場合・・・自動車検査証の写し、売買契約書又は売渡承諾書の写し等
(ウ)リースする場合・・・自動車検査証の写し、リース契約書の写し等
(2)事業用自動車の乗務員の休憩、仮眠又は睡眠のための施設の概要を記載した書面
(3)事業の用に供する施設の概要及び付近の状況を記載した書類
①施設の案内図、平面(求積)図、配置図
②施設の使用権原を証する書面
(ア)自己所有の場合・・・不動産登記簿謄本等
(イ)借入する場合・・・賃貸借契約書の写し等
※土地・建物について1年以上の使用権原を有している必要があります
③建築基準法、都市計画法、消防法、農地法等関係法令に抵触しないことの書面・・・宣誓書等
④車庫前前面道路の道路幅員証明書
※前面道路が私道の場合には、当該私道の通行に係る使用権原を有する者の承諾書が必要となります
(4)推定する一年間の取扱旅客の種類及び運輸数量並びにその算出の基礎を記載した書面
(5)運送需要者との契約書又は協定書の写し
(6)既存の法人にあっては、次に掲げる書類
①定款及び登記簿謄本
②役員の名簿及び履歴書
※役員のうち1名以上が当該事業に専従する必要があります
(7)個人にあっては、次に掲げる書類
①戸籍抄本
②履歴書
(8)法第7条(欠格事由)各号及び審査基準1.(11)のいずれにも該当しない旨を証する書類・・・宣誓書等(申請者及び常勤役員全員分)
(9)平成17年国土交通省告示第503号で定める基準に適合する任意保険又は共済に計画車両の全てが加入する計画があることを証する書類・・・契約申込書の写し、見積書の写し、宣誓書等
(10)事業用自動車の運行管理体制等を記載した書類
①管理運営体制組織図
②運行管理者の資格要件を証する書類・・・運行管理者資格者証及び就任承諾書等
③整備管理者の資格要件を証する書類・・・資格者証又は管理者手帳、就任承諾書等
※選任前講習修了者の場合は、2年以上在実務経験を証する書面(在職証明書及び履歴書等)も添付する必要があります
④運転者選任予定者・・・運転者予定名簿、運転免許証の写し及び就任承諾書等
一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス事業)からの免許換えをご検討されている方、これから送迎バス等の免許の新規取得をご検討されている方は、ご気軽にお問い合わせください。
※初回のご相談は、無料です(ただし、出張相談を除きます)
特定旅客自動車運送事業許可申請サポート
サポート内容
1.申請から許可まで
①新規許可申請に向けた審査基準の確認及び助言(営業所・自動車車庫等の法令調査、運輸局への事前相談を含む)
②準備書類一式の案内及びヒアリングシート・添付書類(様式)の送付
③新規許可申請書類の作成及び提出
④申請後の補正対応(運輸局とのやり取りなどの窓口業務を含む)
2.許可後から事業開始まで
①運行管理者・整備管理者の選任届
②事業用自動車連絡書等の発行手続
③事業用ナンバー(緑ナンバー)への交換手続の助言
料金
(1)登録免許税(納付手数料)
特定旅客自動車運送事業許可後に登録免許税として30,000円を納付する必要があります。
また、当事務所に上記申請代行業務をご依頼いただく場合には、上記費用に加えて、行政書士の報酬をお支払いただいております。
(2)報酬(目安)
特定旅客自動車運送事業許可申請代行業務を当事務所へご依頼いただく場合には、通常、下記報酬をお支払いただいております。
なお、下記報酬額はあくまで目安であり、正確な報酬額を算出するには事業者の方の個別具体的な事情を勘案する必要があるため、当事務所では初回のご相談後に正式なお見積りを提示しております。
300,000円(税込330,000円)~
なお、初回のご相談は無料でお受けしておりますので、ご気軽にお問い合わせください(ただし、出張相談を除きます)。
※ZoomやLINEなどのビデオ通話を利用した無料相談も行っております