貨物利用運送事業許認可手続き【Q&A】

今回は、貨物利用運送事業についてのよくある質問のうち申請書類作成時に注意すべき点について、Q&A形式にて情報を提供したいと思います。

目次

制度編

貨物利用運送事業法の「附帯業務」とは、具体的にどのような業務を指すのか。

貨物利用運送事業に附帯して行う貨物の荷造り、保管、仕分け、代金の取立て及び立替え等をいいます。
なお、標準利用運送約款の改正を受けて、運賃に加えて附帯業務等に係る料金についても届出が求められることになりましたので、運賃料金を設定・変更する際にはご注意ください。

ドアから仕向港まで、仕向空港からドアまで利用運送を行う場合は、一貫輸送となっていない(片方の集配がない)が、この様な場合についても第二種貨物利用運送事業に該当するのか。

第一種貨物利用運送事業に該当します。
第二種貨物利用運送事業とは、幹線輸送(船舶、航空、鉄道)に係る利用運送と当該利用運送に先行及び後続する貨物の集貨及び配達のためにする自動車による運送(集配)とを一貫して行う事業のことをいいます(貨物利用運送事業法第2条第8項)。
従って、国内のドアから国外の仕向港又は国内の仕立港から国外のドアといった片方の集配がない輸送は、第二種貨物利用運送事業には該当せず、第一種貨物利用運送事業になります。
そのため、国内のドアから仕立港までの第一種貨物自動車利用運送事業の登録及び国内の仕立港から国外の仕向港までの第一種外航利用運送事業の登録が必要になります。

自社で登録又は許可されていない利用運送の区域であっても、委託先で登録又は許可を受けていれば、当該区域において貨物利用運送事業を行うことは可能なのか。

自社が登録又は許可された利用運送の区域における範囲内でしか貨物利用運送事業は行えません。
すなわち、当該運送に係る「利用運送の区域又は区間」、「貨物の集配の拠点」等、自社と委
託先事業者が許認可を取得している同じ区間でなければ、当該区間における貨物利用運送を行うことは出来ません。

申請編

貨物利用運送事業の登録・許可申請時に提出する「事業計画」には具体的にどの様な内容を記載するのか。

事業計画では、次の内容を明示することが必要です。

① 利用運送機関の種類(鉄道、航空、自動車、外航海運、内航海運の別)
② 利用運送の区域又は区間
③ 主たる事務所の名称及び位置
④ 営業所の名称及び位置
⑤ 業務の範囲
⑥ 貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、保管施設の概要
⑦ 利用する運送を行う実運送事業者又は貨物利用運送事業者の概要
⑧ 実運送事業者又は貨物利用運送事業者からの貨物の受取を他の者に委託して行う場合にあっては、受託者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名並びに営業所の名称及び位置

貨物利用運送事業における「事業計画」に記載する「業務の範囲」とは、具体的にどういうものを指しているのか。

利用する運送機関により異なります。具体的には以下の通りです。

(1)鉄道利用の場合
① 「一般事業」と記載
② 鉄道貨物運送の種類(コンテナ輸送、車扱輸送などの別)
③ 特殊な分野(タンク車による石油輸送など)に限った事業かどうかの別

(2)航空利用の場合
① 「国際運送」又は「国内運送」の別
② 「一般混載事業」又は「宅配便事業」の別

(3)内航海運の場合
① 「一般事業」と記載

(4)外航海運の場合
① 「一般事業」と記載

第二種貨物利用運送事業の許可申請時に提出する「集配事業計画」には具体的にどの様な内容を記載するのか。

集配事業計画では、次の内容を明示することが必要です。

① 貨物の集配の拠点
② 貨物の集配を行う地域
③ 貨物の集配に係る営業所の名称及び位置
④ 貨物の集配を自動車を使用して行う場合にあっては、次に掲げる事項
イ 各営業所に配置する事業用自動車の数
ロ 自動車車庫の位置及び収容能力
ハ 事業用自動車の運転者及び運転の補助に従事する従業員の休憩又は睡眠のための施設の位置及び収容能力
⑤ 貨物の集配を他の者に委託して行う場合にあっては、受託者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名並びに営業所の名称及び位置並びに受託者が当該貨物の集配の用に供する事業用貨物自動車の数

純資産の額が赤字の場合、事業免許を取得することは可能なのか。また、経常収支で赤字の場合はどうか。

貨物利用運送事業法においては、利用者である荷主の保護の観点から、事業開始に当たっては、最低限必要な財産的基礎を有することが求められます。そして、事業を遂行するために必要と認められる財産的基礎として、貨物利用運送事業法施行規則において、基礎資産額(※)が300万円以上であることが求められています(施行規則第7条)。そのため、純資産の額が赤字の場合には、事業免許を取得することはできません。

なお、直近の決算以後、次期決算途上において増資を行う等、基準資産額に明確な増加があったことが明確であるときは、直近年度の純資産額に当該増資額を加算した額を基準資産額として取り扱っています(施行規則第8条第3項)。

また、経常収支については審査の対象とはなっていないため、基準資産額300万円以上を有していれば事業免許を取得することが可能です。

※基準資産額とは
貸借対照表又は財産に関する調書(以下「基礎資産表」という)に計上された資産(創業費その他の繰延資産及び営業権を除く)の総額から当該基礎資産表に計上された負債の総額に相当する金額を控除した額を指します

集荷した貨物の積み替えだけを行う施設、又は一時蔵置するだけの施設でも、保管施設として申請しなければならないのか。

保管施設とは、倉庫・荷扱いの役割をもつ施設になるため、貨物をコンテナに積み込む又は貨物をコンテナから積み降ろす、いわゆる荷扱いを行う施設を指します。

そして、貨物利用運送事業では、基幹保管施設(幹線輸送の前後の基幹となる保管施設)を審査の対象としています。この基幹保管施設とは、①仕向地別仕分け、②コンテナへの積込み・積卸し、③通関、のいずれかの業務を行う施設をいいます。

そのため、倉庫・荷扱いを行う施設を使用するのであれば、貨物の積替えや一時蔵置するだけの保管施設でも保管施設として申請する必要があります。

なお、基幹保管施設以外の保管施設については、当該貨物利用運送事業を遂行するために必要な保管能力を有し、かつ、盗難等に対する適切な予防方法を講じた保管施設である等、当該貨物利用運送事業を遂行する上で適切な規模、構造及び設備を有するものであることを証する宣誓書の提出に代えることが可能となっています。

集配業務について他者を利用する場合、当該集配指示を行う自社の営業所を集配事業計画における営業所として記載するべきか。

上記の集配指示を行う自社の営業所は、集配業務を行う営業所と見なされますので、集配事業計画における営業所として記載して下さい。

集配業務の委託先である実運送事業者がさらに他の実運送事業者に委託する場合、その再委託先の実運送事業者の名称等まで集配事業計画に記載しなければならないのか。

集配業務の委託先である実運送事業者がさらに他の実運送事業者に委託する場合にあっては、その再委託先の実運送事業者の名称等について集配事業計画に記載する必要はありません。すなわち、利用運送事業者としては直接の委託先である集配業務の実運送事業者に対して管理監督責任を果たせば良いこととされています。

集配事業計画の中で記載すべき「車両数」とは、営業所に配置されている一般貨物自動車運送事業に供するすべての車両台数なのか、それとも貨物利用運送事業の集配業務に実際に使用する車両台数で足りるのか。

集配事業計画の中で記載すべき「車両数」は、貨物利用運送事業の集配業務に実際に使用する車両台数を集配事業計画に記載して下さい。

変更手続き編

許可等の申請中に代表者・住所等が変更となった場合、どのような手続きが必要か。

許可等の申請中に代表者・住所等が変更になった場合は、①氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名、②変更した事項、③変更実施日、④変更理由、を記載した書類(申請内容変更届出書など)及び当該変更を証明する書類(法人登記簿謄本など)を提出する必要があります。

自動車の貨物利用運送事業者が、航空の貨物利用運送事業の資格を受けるためには、新たな登録申請又は許可申請が必要か、それとも事業計画の変更で良いのか。

貨物利用運送事業の同一種別(第一種又は第二種)の中では、他の輸送モードの資格を受けるためには、事業計画の変更登録又は変更認可を取得すれば良く、新たな登録申請又は許可申請は必要ありません。

貨物利用運送事業を休止もしくは廃止する場合は、どのような手続きが必要か。

貨物利用運送事業を休止もしくは廃止する場合は、事業を休止もしくは廃止した日から30日以内に、その旨を国土交通大臣に届出をする必要があります(休止の届出は、第二種貨物利用運送事業に限ります)。

ここでいう事業の休止及び廃止とは、「貨物利用運送事業全体の休止又は廃止」をいうため、事業の一部の休廃止(例えば、自動車と航空に係る貨物利用運送事業を営む者が、航空に係る貨物利用運送事業を休廃止する場合)は、事業計画の変更に当たり、これには該当しません。

なお、事業の一部の休廃止をする場合(例えば、自動車と航空に係る貨物利用運送事業を営む者が、航空に係る貨物利用運送事業を休廃止する場合)は、事業計画の変更の認可申請を行う必要があります(法第25条、施行規則第20条)。

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