貨物利用運送事業の概要【Q&A】

目次

基本

「貨物利用運送事業」と「実運送事業」の違いとは?

「貨物利用運送事業」とは、他人(荷主)の需要に応じ、有償で利用運送(自らの運送機関を利用し運送を行う者(実運送事業者)の行う運送を利用して貨物を運送すること)を行う事業をいいます。
そのため、自社の貨物を実運送事業者に運送させるといった自らの需要に応じる行為や、無償で貨物利用運送を行う行為は、貨物利用運送事業には該当しません。

これに対して、「実運送事業者」とは、貨物利用運送事業法上では、以下に掲げるものをいうと規定しています(第2条第2項から第5項)

●船舶運送事業者(海上運送法の船舶運航事業を経営する者)

●航空運送事業者(航空法の航空運送事業を経営する者)

●鉄道運送事業者(鉄道事業法第2条第2項の第一種鉄道事業もしくは同条第3項の第二種鉄道事業を経営する者又は軌道法第4条に規定する軌道経営者)

●貨物自動車運送事業者(貨物自動車運送事業法の一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を経営する者)

そのため、軽自動車、ロープウェイ、港湾運送を行う事業を経営する者は、「実運送事業者」には当たらないため、これらの運送機関を利用して運送する事業は、貨物利用運送事業には該当しません。

「貨物利用運送事業」と「貨物取次事業」の違いとは?

「貨物利用運送事業」は荷主と運送契約を締結し、荷主に対し運送責任を負う事業をいいます。

これに対して、「運送取次事業」は、荷主に対して運送責任を負うものではなく、他人(荷主)の需要に応じ、有償で、自己の名をもってする運送事業者の行う貨物の運送の取次ぎ若しくは運送貨物の運送事業者からの受取(運送の取次ぎ)又は他人(荷主)の名をもってする運送事業者への貨物の運送の委託若しくは運送貨物の運送事業者からの受取り(運送の代弁)を行う事業です。

例えば、コンビニエンスストアーが取り扱っている宅配便の受け付け業務は、この運送取次事業に該当します。

なお、この貨物取次事業は、平成15年の法改正より規制が撤廃され、同事業を行うには免許が不要となりました。

貨物利用運送事業を行っているにもかかわらず、自社が行っているのはあくまで貨物取次事業だから貨物利用運送事業の免許がなくても大丈夫だと勘違いしている事業者の方からお問い合わせをいただくケースがよくあります。
最悪の場合、無免許事業者として行政処分や刑事処分を受けるだけではなく、貨物利用運送事業の申請条件の欠格事由にも該当するため、処分後5年間は貨物利用運送事業に参入することが出来なくなりますのでご注意ください。

軽貨物運送事業者(軽自動車)を使って貨物利用運送事業を行う場合には、貨物利用運送事業の許認可は必要か?

貨物利用運送事業法上、自動車につき、道路運送車両法第2条第2項の自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く)であると規定されています。

よって、軽貨物運送事業者(軽自動車)を使って貨物利用運送事業を行う場合には、貨物利用運送事業法上の規制を受けないため、同事業の許認可は必要ありません。

「利用の利用」の場合にも貨物利用運送事業の登録・許可が必要か?

“利用の利用”とは、貨物利用運送事業者を使って行う運送事業のことをいいます。これも“貨物利用運送事業”に該当するため、登録・許可が必要となります。

確かに、貨物利用運送事業法第2条第1項では、「利用運送とは、運送事業者の行う運送(実運送に係るものに限る。)を利用してする貨物の運送をいう 」と規定しています。

しかし、運送を委託する事業者が実運送事業者か利用運送事業者によって、当該運送の委託者たる事業者が、契約の主体として、荷主に対して第一義的な運送責任を負うという利用運送事業法上の理念は変わらないからです。

外航海運・国際航空の貨物利用運送事業は、輸出入貨物の運送双方が貨物利用運送事業法の対象となるか?

貨物利用運送事業法による登録・許可の対象となる事業は、輸出に係る貨物利用運送事業が対象となっています。そのため、輸入及び三国間に係る貨物利用運送事業については、同法による規制の対象とはなりません。

なお、輸入後(輸入通関後)の輸送に係る貨物利用運送については、同法の対象となります。すなわち、輸入後の国内での貨物利用運送(自動車・内航海運・国内航空・鉄道)については、貨物利用運送事業法による登録・許可の対象となる事業に該当します。

外国事業者とは?

貨物利用運送事業の輸送モードのうち、「外航海運」「国際航空」については、「外国人事業者」という区分があります。

この「外国事業者」というのは、以下に該当する事業者のことを言います。

①日本国籍を有しない者(いわゆる外国人)
②外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの
③外国の法令に基づいて設立された法人その他の団体
④法人であって、①~③までに掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の3分の1以上若しくは議決権の3分の1以上を占めるもの(いわゆる外資系企業のケース)

この外国事業者に該当する場合は、後述する「相互主義」による参入規制に抵触するおそれがあるため注意が必要となります。

また、手続きの面では、外国事業者は、利用運送約款の認可申請が不要だったり、事業概況報告書の提出が不要だったりと、邦人事業者と比べて若干手続きが簡略化されています。

外国事業者における相互主義とは?

「相互主義」とは、我が国企業と外国企業が国際利用運送事業(国際航空及び外航海運を利用した運送事業)の分野において公正な事業活動の遂行を確保するために採用されている参入規制を言います。

すなわち、諸外国における国際貨物運送に係る貨物利用運送事業に対する規制の態様は様々で、国家貿易国等のように他国企業の参入をほとんど認めていない国の企業については、当該国の規制を背景として当該国内で優位な事業活動をしています。

そのため、我が国において自由な事業活動を認めることは、市場の独占、運賃の著しい攪乱等により国際利用運送事業の分野において公正な事業活動の遂行が確保されない恐れがあります。

他方、貨物利用運送事業に対し全く規制を行っていない国の企業に対し、仮に我が国が強い参入規制を実施することも、国際利用運送事業の分野における公正な事業活動を妨げることになります。

よって、我が国企業と外国企業とが国際利用運送事業の分野において公正な事業活動の遂行を確保するために一律の規制を行うのではなく、外国が我が国企業に対して行っている取扱いに着目して、それぞれの企業が事業活動を遂行するための条件の均等化を図ることとしています。

自動車

トラック事業者(貨物自動車運送事業者)が他のトラック事業者を利用する場合に、貨物利用運送事業の登録が必要か?

トラック事業者が他のトラック事業者(実運送事業者)を利用する場合には、貨物利用運送事業法第19条の適用除外にあたるため、貨物利用運送事業法に基づく登録は必要ありません。

ただし、貨物自動車運送事業法に基づく事業計画の変更認可申請を行う必要はあります。

そのため、当初から他のトラック事業者(実運送事業者)を利用することを予定している場合には、貨物自動車運送事業許可申請時に、貨物利用運送事業についても事業計画に盛り込んだ上で申請することをお勧めします。

なお、トラック事業者が利用運送専業者(トラック事業者でない利用運送事業者)を利用する場合は、貨物利用運送事業法に基づく第一種貨物利用運送事業の登録が必要となります。

貨物自動車運送事業と貨物利用運送事業を兼業しているトラック事業者は、貨物自動車運送事業に係る事業報告書を提出すれば、貨物利用運送事業に係る事業報告書を提出しなくても済むのか?

貨物自動車運送事業と貨物利用運送事業の事業報告書とでは、報告目的が異なるため、それぞれの事業ごとに提出する必要があります。

なお、役員の変更届など一部の変更手続きについては、1つの届出書を提出すれば足りる場合もあります。

第2種貨物利用運送事業の許可があれば、貨物自動車運送事業の許可がなくても自らの貨物の集配を行うことはできるか?

第二種貨物利用運送事業許可を受けた者であって、第二種貨物利用運送事業許可の申請時に、貨物利用運送事業法第23条第5号に規定する者に該当するものは(いわゆる特定第二種貨物利用運送事業者)、貨物自動車運送事業の許可を受けることなく、自ら貨物の集配を行うことができます(貨物自動車運送事業法第37条第2項)。

外航海運

「利用する運送事業者」との契約書の写しに代えて船荷証券(B/L)の写しでも構わないのか?

「利用する運送事業者」との契約書としては、原則として貨物利用運送契約書の写しを添付する必要があります。

しかし、外航海運事業における商取引慣行上、貨物利用運送契約書の添付が困難である場合には、例外的に運賃の収受に関する書類等(見積書の写しなど)に代えることができます。

これは、そもそも利用する運送事業者との契約書等の提出が求められている趣旨が、貨物利用運送事業を確実かつ適切に遂行できることを確認することにあるからです。

すなわち、船荷証券(B/L)については、貨物利用運送事業を開始し、実際に貨物の運送行為が発生して貨物利用運送事業者が発行するものであり、事業許可等を取得せずに発行できるものものではないため、契約書に代わって船荷証券(B/L)では審査を行うことができないからです。

船から積卸した貨物を同一港湾地区内の倉庫にトラックで運送する場合も第二種貨物利用運送事業の許可が必要となるのか?

同一港湾地区内での貨物の運送を港湾運送事業として行う場合には、これらの運送に関しては、第二種貨物利用運送事業の許可は不要です。

ただし、これらの運送事業を自社で行う場合には、一般港湾運送事業の許可を取得する必要があるのでご注意ください。

利用運送約款をどうしようか迷っている?

外航海運(邦人)の貨物利用運送事業の免許を取得する場合、利用運送約款については、「国土交通省が定める標準約款」か「JIFFA(国際フレイトフォワーダーズ協会)約款」、「自社で定める個別約款」のうちから選択することになります。

(1)標準約款について
先ず、「国土交通省の定める標準約款」を使用する場合は、貨物利用運送事業法上、認可したものとみなされるため利用運送約款の認可申請は不要となっています。

ただし、この標準約款は第一種のみにしか対応していないため、第二種の免許取得を検討している場合には、JIFFA約款又は自社約款を選択する必要があります。

(2)JIFFA約款について
また、「JIFFA約款」についても、既に認可されている利用運送約款であることから、利用運送約款認可申請書にJIFFA約款のサンプルを添付すれば、ほぼ審査期間を経ずに利用運送約款の認可を得ることが可能となっています。

しかし、JIFFAに入会し、入会金と年会費を納めなくてはならないので、JIIFA約款を使用し続けるためには、毎年一定額の固定費がかかります。

(3)自社約款(個別約款)について
さらに、自社で定める個別利用運送約款を使用する場合、英語表記の利用運送約款に日本語訳を添付して、利用運送約款の認可申請をする必要があります。

著作権の問題は別にして、既に認可を経ている利用運送約款であればさほど審査期間は掛からないのですが、オリジナルの利用運送約款の場合は、利用運送約款の内容を一語一句審査する必要があることから、その分審査に時間が掛かってしまいます。

そのため、JIFFA約款と自社約款との選択においては、免許取得までの期間と約款にかける労力やコストの観点から判断することになります。

航空

航空貨物運送における一般混載事業と宅配便事業の違いとは?

一般混載事業とは、主に企業の複数の貨物を取り扱う事業のことで、荷主の複数の貨物を1つの運送状で対応することが一般的となっています。

また、料金については、複数貨物の最終配達場所が異なることに鑑み、航空運送部分に係る運賃、集荷、配達に係る料金にそれぞれ区分されており、料金については地域制となっています。

なお、この一般混載事業を行うには、航空貨物代理店となる必要があります。

一方、宅配便事業とは、主に一般消費者の貨物を取り扱う事業で、一般消費者の一つの貨物を一つの運送状で対応することが一般的となっています。

対象を一般消費者の貨物としていることから分かりやすい商品とすることが求められています。具体的には、料金については、ドアツードアの通し運賃、地帯制の料金体系となっているとともに、商品に特別な名称を付与することが求められています。

航空貨物代理店になるには、どのような手続きが必要か?

航空貨物代理店になるには、航空法第133条に基づき、次に掲げる事項を記載した航空運送代理店業経営届出書に代理店契約書を添えて国土交通大臣に提出することが必要となります。

(1)氏名及び住所
(2)届出をする者が法人であるときは代表者及び役員の氏名
(3)当該代理店契約の相手方の氏名及び住所
(4)事務所又は営業所の名称及び所在地
(5)当該代理店契約の概要
(6)届出をする者が現に経営している事業があるときはその概要
(7)営業開始の予定期日

外国人等は、なぜ、国内航空の貨物利用運送に係る登録や許可を取得できないのか?

国内航空に係る貨物利用運送事業を外国人、外国法人等が行えない(貨物利用運送事業法第6条第5項)理由は、実運送事業である国内航空運送事業について、外国人、外国法人等が航空運送事業を行えないことにしていることを踏まえたものです。

すなわち、航空運送については、シカゴ条約により領空主権が確立しており、また領空主権の考え方をもとにカボタージュ(国内貨客輸送)の自国籍航空機への留保が行えることとされています。そのため我が国の航空法も領空主権の考え方を徹底し、外国人及び外国法人等を欠格事由対象者とし、国内航空運送事業を行えないよう規定しています。

つまり、国内航空の貨物利用運送事業を外国人、外国法人等も行えることにすると、実質的に、国内航空貨物運送を外国人、外国法人等が行うことになり、実運送において自国籍航空機への留保を行なっている意味が失われることになります。そのため、従来航空法において外国人、外国法人等に対し国内航空運送事業を禁止していることにならい、本法でも同様の措置を講じています。

内航海運

トラック事業者が旅客フェリーを利用して貨物を運送する場合、内航の貨物利用運送事業に該当するか?

貨物自動車運送事業又は第一種貨物自動車利用運送事業の一環として貨物の運送を引き受ける場合で、旅客定期航路に就航する船舶を利用し貨物運送サービスを提供する場合には、内航の貨物利用運送事業に該当しません。

これに対して、旅客定期航路に就航する船舶を運航する船舶運航事業者と運送に関する契約を締結し、荷主に対して運送責任を負って貨物運送サービスを提供する場合は、内航の貨物利用運送事業に該当します。

すなわち、旅客フェリーにトラックごと乗り入れる場合には、フェリー搭乗中の航路間で発生した運送責任をフェリー会社が負うのか、トラック事業者が負うのかにより、内航の貨物利用運送事業に該当するのか判断することが求められます(フェリー会社とトラック事業者との間に運送契約の締結があるかが目安となります)。

鉄道

貨物を鉄道コンテナに積載し陸送する場合、貨物の積み替えをするトラックの仕様は決まっているのか?

鉄道コンテナの輸送安全を確保すべく、鉄道コンテナをトラックの荷台に固定するための装置を有することが求められます。

なお、最近では、シーアンドレールという複合輸送手段を利用する事業者も増えつつあります。そのため、船舶のコンテナと鉄道のコンテナサイズの統一も図られています。

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