貨物利用運送事業の免許取得後、ライセンスを維持するため、少なくとも毎年の定期報告書と役員変更届出書だけは忘れずに提出するようにとお伝えしましたが、以下にてライセンスを維持するために必要な各種変更手続の詳細についてもコメントしたいと思います。
1.事業計画、集配事業計画の変更について
第二種貨物利用運送事業者は、貨物利用運送事業法第25条(第一種の場合は法第7条他)の規定に基づき、以下の事項に変更のある場合は、事業計画及び集配事業計画(第一種の場合は、事業計画のみ)の変更認可又は届出を行う必要があります。
また、変更認可・事前届出が必要な場合には、国土交通省又は地方運輸局に対して予め変更認可申請又は事前届出を行う必要があるため、ご注意ください。
さらに、事後届出の場合は変更後30日以内に、手続書類等を作成又は添付し、国土交通大臣又は地方運輸局長等あてにこれを提出する必要があります。
【提出書類】
① 更認可申請書、事前届出書、事後届出書
② 変更した事項に係る新旧対照表
③ 変更した事項に係る契約書、使用権限を証する書類等
【事業計画】
(変更する事項/対応する手続)
① 利用運送に係る運送機関の種類(※)・・・変更認可申請
② 利用運送の区域又は区間・・・変更認可申請
③ 主たる事務所の名称及び位置・・・事後届出
④ 営業所の名称及び位置・・・事後届出
⑤ 業務の範囲・・・変更認可申請
⑥ 保管施設の概要・・・事後届出
⑦ 利用する運送を行う実運送事業者又は利用運送事業者の概要・・・事後届出
⑧ 受取事業者の氏名又は名称及び住所並びに法人の場合は代表者の氏名、営業所の名称及び位置・・・事後届出
※なお、新たに第一種(又は第二種)貨物利用運送事業を行おうとする場合には、別途、登録(又は許可)申請が必要となります
【集配事業計画】
(変更する事項/対応する手続)
① 貨物の集配の拠点・・・変更認可申請
② 貨物の集配を行う地域・・・事後届出
③ 貨物の集配に係る営業所の名称及び位置・・・変更認可申請又は事後届出
④ 各営業所に配置する事業用自動車の数・・・事前届出
⑤ 自動車車庫の位置及び収容能力・・・変更認可申請
⑥ 事業用自動車の運転者等の休憩・睡眠のための施設の位置及び収容能力・・・変更認可申請
⑦ 貨物の集配を他の者に委託する場合の受託事業者・・・事後届出
2.その他の届出事項について
(変更する事項/対応する手続)
① 氏名若しくは名称、住所又は国籍に変更があった場合・・・事後届出
② 法人であって役員又は社員に変更があった場合・・・事後届出
※なお、「貨物流通事業者の氏名の変更の届出等の一本化した提出の手続を定める省令(平成7年6月23日運輸省令第37号)」により他の事業と併せて届出することもできます
3.提出先について
(輸送機関の種類/対応する提出先)
①鉄道・・・所管する地方運輸局※1
②内航海運・・・同上
③外航海運・・・同上(あて名が国土交交通大臣となるものについては国土交通省に直接提出することも可能です)※2
④国内航空・・・同上
⑤国際航空・・・同上
※1 利用運送機関の種類の変更及び当該変更に伴う変更に関するものの場合は国土交通大臣
※2 事業計画に関する変更は国土交通大臣、集配事業計画に関する変更は地方運輸局長
以上のように、各種変更手続は、変更事項に応じて必要な手続や提出先も大きく変わってきます(特にライセンスが第一種・第二種にまたがる場合やライセンスが複数の輸送モードに渡る場合は、手続もかなり複雑となります)。
貨物運送事業者の中でも実運送事業者とは異なり、貨物利用運送事業者は、上記の各種変更手続を行わなくても(発覚しない限りにおいては)同事業を継続することが可能なため、貨物利用運送事業者は各種変更手続を怠っていることが多く見受けられます。
しかし、いったん国土交通省又は地方運輸局の監査が入り、事業実態と申請状況が大きく異なっていることが判明してしまうと、その分行政処分も重くなる傾向にあります。
確かに、初回は、直ぐに改善策を講じれば行政指導に留まりますが、次回以降に法令違反が発覚すると、行政処分により事業停止や免許取消しになるケースもありますので、十分にご注意ください。
特に、行政処分を受けると、事業に支障が出て来るだけでなく、国土交通省や地方運輸局のWEBサイトに行政処分情報が公表されるため、事業者のイメージダウンに繋がり社会的信頼性を大きく損なってしまいます。
貨物利用運送事業免許を取得した事業者の方々は、免許を取得したらそれで終わりではなく、免許取得後もライセンス維持のためには定期報告書の提出や各種変更手続が必要であることを常に意識しておいてください。