トラック運送業の健全な発達及びトラックドライバーの労働条件の改善等を図るため、平成30年12月14日に改正貨物自動車運送事業法が公布されました。
同法の主な改正事項は以下の4点からなります。
①規制の適正化・・・令和元年11月1日施行
②事業者が遵守すべき事項の明確化・・・令和元年11月1日施行
③荷主対策の深度化・・・令和元年7月1日施行
④標準的な運賃の告示制度の導入・・・令和元年12月14日施行
そこで、今回は改正事項①~④の概要について取り上げたいと思います。
<改正の概要>
1.規制の適正化
(1)欠格期間の延長等
法令に違反した者等の参入が厳格化されました。
①欠格期間の延長(2年→5年)
②処分逃れのため自主廃業を行った者の参入制限
③密接関係者(親会社等)が許可の取消処分を受けた者の参入制限等
(2)許可の際の基準の明確化
以下について、適切な計画・能力を有する旨を要件として明確化しました。
①安全性の確保(車両の点検・整備の確実な実施等)
②事業の継続遂行のための計画(十分な広さの車庫等)
③事業の継続遂行のための経済的基礎(資金)等
(3)約款の認可基準の明確化
荷待時間、追加的な附帯業務等の見える化を図り、対価を伴わない役務の発生を防ぐために基準を明確化しました。
→原則として運賃と料金を区別して収受
※「運賃」=運送の対価、「料金」=運送以外のサービス等
2.事業者が遵守すべき事項の明確化(許可後の継続的なルールの遵守)
(1)輸送の安全に係る義務の明確化
事業用自動車の定期的な点検・整備の実施等
(2)事業の適確な遂行のための遵守義務の新設
①車庫の整備・管理
②健康保険法等により納付義務を負う保険料等の納付
3.荷主対策の深度化
トラック事業者の努力だけでは働き方改革・法令遵守を進めることは困難なため(例えば、過労運転や過積載等)、荷主の理解・協力のもとで働き方改革・法令遵守を進めることができるよう、以下の改正を実施しました。
(1)荷主の配慮義務の新設
トラック事業者が法令遵守できるよう、荷主の配慮義務を設けました。
(2)荷主勧告制度(既存)の強化
①制度の対象に、貨物軽自動車運送事業者を追加
②荷主勧告を行った場合には、当該荷主の公表を行う旨を明記
(3)国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定の新設
①トラック事業者の違反原因となる恐れのある行為を荷主がしている疑いがある場合
・国土交通大臣が関係行政機関の長と、当該荷主の情報を共有
・国土交通大臣が関係行政機関と協力して、荷主の理解を得るための働きかけ
②荷主への疑いに相当な理由がある場合
・国土交通大臣が、関係行政機関と協力して、要請
③要請してもなお改善されない場合
・国土交通大臣が、関係行政機関と協力して、勧告+公表
↓
荷主の行為が独占禁止法違反の疑いがある場合
・公正取引委員会への通知
4.標準的な運賃の告示制度の導入(令和5年度末までの時限措置)
トラック事業者は荷主への交渉力が弱い等必要なコストに見合った対価を収受しにくいことから、結果として法令遵守しながらの持続的な運営ができないといった背景がありました。
法令遵守をして運営する際の参考となる運賃を示すのが効果的なことから、標準的な運賃の告示制度の導入が実施されました。
→労働条件の改善・事業の健全な運営の確保のため、国土交通大臣が、標準的な運賃を定め、告示ができます
以上